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zoom RSS 八甲田トンネル(7)・最終回

<<   作成日時 : 2009/06/01 01:33   >>

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一週間の連載もいよいよ最終回です。
今回は青森方坑口の梨ノ木工区、そして「おまけ」をお送りします。

−◇−


築木館から同じ道路へ戻り、西進して今度は駒込川を渡る手前で南へ入る。
まっすぐ上っていくと梨の木清掃工場に達する道である。

それは割とすんなり見つけられたのだが…

画像


「発電所にご用のある方」ではないので入ることができない。
そういえば、調査資料には「私道」と書いてあったし、ネット上で既報されている方々も「許可を得て撮影」などとしている例が多かった。
残念だがここから先へは進めない。

画像


この周辺といえば、梨ノ木工区の事務所があるのみであった。
5月に再訪したときも、発電所にご用がないので状況は変わらず、事務所や工事の看板だけ消えていた。

青森方坑口を拝むことは不可能なのか。
そこで一計を案じ、田茂木野トンネルの上あたりから対岸を狙えないかどうかやってみた。

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この時はまだ田茂木野トンネル自体どこを通るのかさっぱり分からなかったが、上の道路を走っているとご覧のような測量中心線表示杭(トンボ)を発見した。
このラインに従って梨ノ木側を見ると…

画像


見えた!
07年10月時点ではまだこちら側のスラブは敷設されていなかった。
ちょっと草木が予想以上に邪魔で、これ以上クリアな視界は望むべくもなかった。
というか、ご存じの通りこの年の夏はバカみたいな猛暑で、青森のことだから10月にもなれば木枯らしが吹くだろうと思ったらとんだ誤算であった。

画像


ついでに、この場所には謎の測量点も発見。
トンネルの測量に使われたかどうかは分からないが、田茂木野トンネルのほぼ直上であったことは確かである。



この青森方坑口周辺は、一つ前の築木工区と同様にYahoo地図の航空写真で確認可能である。




以上で八甲田トンネルの全工区のレポートはひとまず完結…ん?






そう、ここから先は「オマケ」の話。

実はこの5月の取材では、どうしても調べておかなければならない物件があった。
それは、承前の調査資料「トンネルと地下 巻32-6」の「4-4 折紙工区」の章に書かれていたことである。

p.14
(前略)本坑では、斜路トンネル交差部より起点方約835mの649.4km付近において八甲田トンネル中央部の地質調査などを目的とした唐川調査坑(昭和56〜57年、平成7〜8年実施)の坑道と出会うことから、調査坑を有効活用した換気計画により長大トンネルにおける坑内環境の向上を図る計画である。


唐川(からかわ)調査坑−これを是非この目で見てみたい。
だからこそ今回は許可を取ってまで折紙工区付近の林道に入ることにしたのである。
もし本当に換気目的で再利用されたとなれば、それらしい痕跡は開業前の現時点ならきっと残っているはず。

しかしこの時点で得られていたのはこの僅かな情報に過ぎない。
その位置から、野内川支流の唐川沢あたりにあるだろうという程度しか推測できなかった。

が、しかし、国会図書館の雑誌検索で再度調べたところ、同じ「トンネルと地下」の巻28-10・1997年10月号に次のような論題名を発見した。

「陸上世界最長トンネルの調査坑試験報告. 東北新幹線 八甲田トンネル. 日本鉄道建設公団」

早速これを借りて読んだ。
何と、八甲田トンネルには都合3カ所の調査坑が存在していたのである。

以下そのスペックである。
・小坪調査坑 延長230m 勾配1/4 (位置や向き不明)
・唐川調査坑 延長522m 勾配1/4 本坑交差角27°本線右
・梨ノ木平調査坑 延長300m 勾配3‰ 本坑交差角110° 本線右(ただし本坑へは到達せず)

唐川の場所はこれで大体決定できたのだが、本坑に接しない小坪と梨ノ木平に関してはどうしようもない。
ただし3カ所とも、国土変遷アーカイブの航空写真で確認したところ、小縮尺のモノクロで分かりにくいが「どうも何かあるっぽい」という結論になった。
(国土変遷アーカイブは何かブロックしているのか直リンがうまく行かないのです。申し訳ありませんが興味のある方は自力で…)

まず今回の取材では小坪から行ったのだが、場所的には屋形工区に行く道路「小坪川林道」の途中にあるに違いない、と踏んでいた。
しかし結果は不振。それらしい痕跡を見つけるには至らなかった。
怪しい場所は確かにあったが、家に帰ってから再度確認したところ、頼りにしていた「県別マップル2 青森県道路地図 2009年版」に描かれている東北新幹線の予定線の位置が南に3〜400mもずれているのに気づいた。
地図上のそれは、屋形斜坑の長さが1km以上になってしまう位置だったのである。

ここにきて「地図に書かれている地中構造物の位置は全くアテにならない」という法則が発動してしまったのだ。

気を取り直して折紙へ。

画像


野内川の橋を渡った後、右へいくと折紙の斜坑口。
そして左へ行くと唐川沢のはずであった。

推定された位置はこの辺である。

ところが、唐川沢のほうに入って200mも進まないうちに、道が信じられない勢いで荒れ出したのである。
この場所で正しいのか、本当に最近まで現役だったのかが疑わしいほどに、路面は洗掘され陥没していた。
ついに1mくらいあるだろう大洗掘に遭遇し、仕方なくレンタカーを放棄して徒歩に切り換えた。
なんだかいつもの調査と全く毛色が違う。

ただ、同じような沢筋の林道が落ち葉が堆積したぬかるみ道であったのに対し、この道路だけは割と厚めに砂利の層があり、比較的近年まで使っていたような雰囲気があった。

途中何度か土砂崩れの場所があり、いい加減引き返そうかと思ったが、とりあえず行けるところまで行くことに決めた。

そして、

画像


この、黒い蛇腹のホースを見たときに少し確信が出てきたのである。
類似の物は、盛岡以北のトンネル取材時随所で発見しているのだ。

いよいよ怪しい場所が見えてきた。

画像


我々は今下から上がってきた。この写真は北を向いている。

この、畑でも何でもない平場は、地図で言うところの唐川沢の徒渉地点の直前である。
期待していた「穴そのもの」は、周辺を探索したが見つからなかった。
が、位置的に考えれば、この奇妙な平場は調査坑の残土を積み上げたものか、あるいは現場が置かれていたか、
坑口があった場所ではないかと思う。
写真の左手に色の違う土砂があってまさか?と思ったが、先述の通り道路自体がめちゃくちゃになるほどの災害(多分原因は去年の豪雨ではないだろうか)の後では判然としない。

結局、換気用としては使用したのだろうか。
もし使用したとしても、掘削の終わった2005年までには埋めてしまったであろうし、これ以上の物証を追求するのはもはや不可能である。

帰り道は、陥没とクマに注意した。



残るは梨の木平調査坑である。
分かっているのは本坑交差角と異常に緩いその勾配である。3‰はもはや水平に近く、他の調査坑がいずれも1/4=250‰であるので、せめて3%の誤植ではないのかと疑ったほどである。
本坑交差位置のキロ程は分からなかった。接続していないので当然なのだが。
ただ、梨の木平というからには、青森方坑口に結構近いのではないかと踏んでいた。

当初、その位置の割り出しは難しくなると思っていた。
しかし意外にも、Yahooマップにそれは写っていたのである。



それは恐らくここだ。
この、林を突っ切って小金沢に下りていく細い道路の先。
この場所なら、3‰という緩い勾配も頷ける。

接続道路は本坑坑口と同じ。場所も大して離れていない。
車を梨ノ木工区の周辺に走らせた。

…。
おかしい。見つからない。

国土地理院地形図には載っていないが、Yahoo地図にははっきりと東に延びる道路が描かれている。
なのに、林の方へ向かっていく道路などありゃしない。
道ごと消えてしまったのだろうか。

同じ場所を三往復もしただろうか。
脳味噌を若干切り換えた。
地図では交差点に見える。が、交差点でなかったとしたら…

そして四度目。
道路脇のガードレールの間隔が妙に不揃いだと気づいたその瞬間だった。

画像


…!?
なんだ今の!?

急いでUターンし近くに車を止め近づく。

画像


これはまさに新幹線様式の門扉。
新幹線とは限らないにしても、ここだけこれがあるのは妙に浮いて見える。
あの位置からここまでの道路が、普通の草地になってしまったので見落としていたのだ。

しかし、驚くと同時に残念なお知らせ。
林の向こうには簡単に行けないであろう事がこれで確定してしまったからである。

画像


看板は錆びまくっていて簡単には読めない。
青森県森林公社管理…だったと思う。
要は無許可立入禁止なのである。

…まぁ、よし入れたとしても、画像でお分かりのようにもう何年もほったらかしたような鬱蒼とした杉木立。
こんな不気味な場所に突入するのはちょっと遠慮申し上げる。
唐川沢でかなり神経をすり減らしてしまっていたし、そのタイムロスで日没間際だったのも恐怖心を煽った。

というわけで、調査坑の探索は三カ所とも今ひとつの結果に終わった。
その先を見られる日は来るのか、来ないのか…。

−◇−


以上、八甲田トンネルレポートでした。
今後も折を見て調査を続け、新しいことが分かり次第こちらでお伝えしていこうと思います。

ご意見・ご感想等お待ちしております。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
私も工事現場(明かり区間が主)を撮影して
写真をアップするというblogをやってますが、
八甲田トンネル新青森側坑口はやはり
難しかったですね。
ちなみに、私は先月新青森側坑口付近まで
行きましたよ。
厳しく「禁止」という雰囲気ではなかったから
入らせていただきましたっていう感じですが、
1つ気になることが・・・・・・。
田茂木野トンネル地上から撮ったという
八甲田トンネル新青森側坑口ですが、
ここの撮影地って大丈夫でしたか?
この質問の理由は、ひとまず明言は避けますが・・・・。
青湘遊郎
2009/06/01 19:39
そうですねぇ…
もう1年半前のことなのでうろ覚え(5月は行っておりません)ですが、プレハブとビニールハウスがあったかなぁ、という記憶がある程度です。
立ち入り禁止ではなかった気がします。

そこの広場に車を止めて、崖っぷちぎりぎりまで歩いていったところ写真のような感じで見えたという塩梅です。
もし何かマズいようでしたら、お手数ですがこのページ右上に私の本サイトへのリンクがございますので、トップページからメールいただけませんでしょうか。
よろしくお願い致します。

あと早速ブログの方拝見させていただきました。地元の方だったのですね。大量の詳細な写真に見とれてしまいました(^^)

七戸の正式な駅名、いつ決まるんでしょうか(苦笑)。あと高速の渋滞は大変ご愁傷様でした。私の地元の福島トンネルが大抵その元凶です(^^;)
TKSoft
2009/06/01 20:28
わかりました。早速このあとメール
送らせていただきます。

>あと早速ブログの方拝見させていただきました。
ありがとうございます。
これからもご覧くださいね。
ちょっと更新できていなかったので、
これから早速更新作業に入ります。
青湘遊郎
2009/06/02 21:08
>青湘遊郎様
メールの方はいつ頃頂けますでしょうか?
TKSoft
2009/06/13 18:20
コメント遅れてすみませんでした。
あれ?
6/2に送れたと思ったんですが・・・・・・。
じゃ、すぐに送ります。
青湘遊郎
2009/06/16 23:02
先ほどメール送りました。
outlookが環境上使用できないので
niftyのウェブメールで送ってます。
ご確認ください。
青湘遊郎
2009/06/16 23:26
大坪工区、県道242号至近に換気立坑があったようです。
取材済み(埋め戻しで状況不明等)であれば申し訳ありませんが、該当する物件がなさそうなので、コメントしました。

http://www.yamaiga.com/road/seiotu/main.html
通りすがり
2014/08/10 19:12
>通りすがり様

貴重な情報ありがとうございます。
実は、昨年公開された八甲田トンネルを含む新青森までの延伸区間の工事誌に、当該の換気立坑の記載があるのを確認していました。
が、そのあと現地取材していないので現存しているかどうか不明です。

というかまさかあの有名な「山いが」様の所にこんな情報があったとは(^^;)
全くのノーマークでした。

何か収穫があれば追補したいところです。
狩野孝弘(管理人)
2014/08/15 23:43

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