Nゲージ・Fastech色のE2系
ちょっとトンネルからそれて、今日は模型の話です。
珍しく祝日が休みでした。
書けるうちに書いておかないとネタがたまる一方です。
遡ること2年前。
私の所属する鉄道模型の会ではある問題が起こっていました。
この会では、毎年11月~12月に奥州市の大きなホールを借りて公開運転会を行うのですが、2002年以降ずっと頭を悩ませていたのが「はやて問題」でした。
岩手を本拠とする地域で「はやて」を知らない人はいません。が、会では予算の都合ですぐにはE2系を揃えることができませんでした。
年を経るごとに、運転会では子供達(注:毎年見に来る子などは相当目が肥えていらっしゃる)からのクレームが増えていきました。
「なんではやてじゃないのー?」
「8両しかないよー?」
「帯が赤いよー?あれじゃあさまじゃーん!」
1999年に購入して以来、相当走り込んでくたびれたトミー製E2系でしたが、次第に子供達から見放されていくその姿にはことさら哀愁が漂っていました。
どうにかしてこいつにもう一花咲かせられないものか。そこで妙案を思いつきました。
その案とは、ちょうど再生産となった「はやて」を購入し、それを「こまち」とペアで組ませ、捻出したこの8両に「特別塗装」を施す、というものでした。
実車を利府で見てから、かねがねFastechを作りたいと思っていたのですが、スクラッチする時間もウデもありません。そこにタネ車が転がり込んできたので、どこまでやれるか検討を重ねました。
とりあえず考える前に塗装を全剥離したのですが、10年経過した塗装はある意味非常に頑丈で、IPAに漬け込むこと半年、それでもベースのホワイトはなかなか落ちません。しかして、IPA除去後うすめ液拭き取りに変えたところ当初は良好でしたが、何とウェルドライン(プラ模型の成型時にできる、別々の経路から流れてきた樹脂の合わさる部分)に沿ってヒビが入ったり、端面がパイ生地のように割れ始まったりして、その修復が大変でした。
結局、経年も考えるとボディに加工するのはやめた方が良いと判断し、単に「Fastechっぽく塗り替える」だけにとどめることにしました。
Fastech最大の特徴は、何と言ってもその「塗装」でしょう。
日本ペイントの「マジョーラ」を使用したと思われる上半分は、見る角度や光線状態によって色が様々に変化し、緑のような青のような、捉えどころのない風合いを醸し出しています。素性が分からないまま廃車されてしまった実車を体現するもので、一言で言えば「謎」です。
さて、模型をどう染めるか。
メタリック系の色は粒状感があり、Nゲージの面積では実に粗く見えてしまいます。また、マジョーラは屈折率が異なる塗装の層がいくつにも分離することで偏光を実現しているため、仮に原色を入手したとしても相当な厚塗りになるのではないかと思われました。もっとも、プラが溶けるような塗料では塗れません。
まずカラーサンプルを作ってみました。
市販の塗料(主にクレオスやタミヤ)で近似した色を幾つか選定し、板に塗っていきます。
やはり粒子が粗い…。
下にピンクの帯を塗ったのは、途中までE5系色にしようか迷ったためですが、E5系のピンクはE2と同じ、微妙に蛍光がかった濃い色(一番近いのは京葉線の帯だろうか)でした。
メタリックの粒子は如何ともしがたいのですが、別の方法でこれを回避することを思い立ちました。
すなわち、普通の銀色(これは見た目が滑らか)を塗ってから、クリア塗装を重ねて本来の車体色とする方法です。
思い立ったはいいが、非常に手間の掛かる作業。
しかも、クレオスのラインナップには「クリアイエロー」と「クリアブルー」はあるものの「クリアグリーン」がないのです。
(缶スプレーの話。私はずぼらなので、調色を伴う車両は作らない、エアブラシは使わないと決めています)
つまり緑色を実現するのは相当な困難を伴いますが、「黄色と青を別々に塗る」ということは、塗装の層が分離するため「マジョーラ」に近い外観を出せるのではないか、というもくろみもありました。
ここで、最初に車体処理が終わったG車にテスト塗装を実施。
ちょうど買ったばかりのトレーラーコレクションを使い、陸送っぽく遊んでみました。
この段階で会メンバーに見せて回ったところ、「もう一段濃いかも」という注文が。
これ以上の重ね塗りはドアなどのモールドが潰れることを恐れましたが、銀色にクリアなので線は消えないようです。
その代わり、塗膜はおそろしくデリケートになりました。
定石では、銀の上に重ね塗りするのは食いつきが悪いためタブーです。あえて塗る場合は、金属車体と同様の処理をする必要がありますが、銀色の反射具合が変わってしまうことを恐れて普通に塗ってしまいました。
(その後、マスキング剥がれや落下事故で血の気が引くことに…)
G車の後は、動力車と先頭車を塗装しました。
先頭車の鼻先の処理は、E5のように(帯を消滅)しようかとも思いましたが、Fastechよりは少し細く、ちょうど塗り替え前のE2系の帯くらいの太さになるようにしました。
この鼻先ですが、自分でも驚いているのですが、マスキングテープはたった1枚で済みました。ゾル等の補助もなく、曲面に導かれるように10mm幅のテープを取り回しました。空気抵抗の少ない曲面とはこういう物なのか?と妙に感心してしまいました(果たして同じ理屈なのかどうか…)。
一番難しいと思われていた先頭の曲面が終わったので、何となく安心して並びを撮影。
ここでもう一つ。
Fastechといえばあの秀逸なデザインのロゴもまた必須アイテムです。
あれが有るのと無いのとでは、模型としての見栄えも断然違ってきます。
どうやってそのロゴを作るかが課題でした。
色々考えた挙げ句、以前特注インレタを作っていただいたことがある「くろま屋」さんにお願いしてみました。
3色刷りなのでかなり高価になってしまいますが仕方ありません。
原図を作るために資料をかき集めましたが、実車も既に廃車になっており、ロゴの寸法を割り出すのには相当苦労しました。結局、車体寸法や窓配置間隔(これ、調べているときにE954形の窓間隔が1両ずつみんな違うことに気付いてさらに驚愕)から「大体これくらい」で割り出すしかありませんでした。
当初、スケール通り(大体のサイズで作ったのだからスケールに拘るのは可笑しいのですが…)に1/160で版を起こして貰いました。しかし出来上がった版(実に精巧で繊細なものです。くろま屋さん恐るべし)を見て、E2系にはインパクトが足りなく思えました。E954の車体が小さいため、相対的にE2の車体では釣り合いが取れなくなります。
そこで、ロゴのスケールを1/150にした版も加えてもらい、インレタにしていただきました。
できたてほやほやのインレタはあちこちにくっつきやすく、元々線がほっそいので転写は大変でした。
帯のロゴよりこちらのロゴの方が大変です。
円形の線と、文字の背後に散らばっているピンクの点々まで実に良く再現されています。が、転写するとあちこち欠けてボロボロに…(泣
次回注文するときは座布団(透明のベースインレタ)付きでお願いします、と申し上げました。
この作業で7号車のロゴ位置を間違ってしまい、修正するためにセロテープを使ったら塗膜ごと剥がれました。
実に涙目です。
なんやかんやで完成。
塗装とロゴ以外の点について簡単に述べますと、
・窓の縁は接着支持っぽく見せるため黒に塗装
・パンタカバーは加工せず、全体をダークグレー、側面のみ白で塗装
・パンタを固定式からE4系グレードアップパーツに交換
・連結順序をFastechっぽく変更
・幌は黒一色
という感じです。
こうして、いぶし銀のE2系に新たな活躍の道が開かれたのでした。
塗装の効果は絶大で、例の子供達もしばらくの間は見た目にだまされてくれそうです。
2009年の運転会で、同じく私が製作したEast-iと連結して走るという謎めいた動画が知人の手でアップされていますので、どうぞご笑覧下さい。
珍しく祝日が休みでした。
書けるうちに書いておかないとネタがたまる一方です。
遡ること2年前。
私の所属する鉄道模型の会ではある問題が起こっていました。
この会では、毎年11月~12月に奥州市の大きなホールを借りて公開運転会を行うのですが、2002年以降ずっと頭を悩ませていたのが「はやて問題」でした。
岩手を本拠とする地域で「はやて」を知らない人はいません。が、会では予算の都合ですぐにはE2系を揃えることができませんでした。
年を経るごとに、運転会では子供達(注:毎年見に来る子などは相当目が肥えていらっしゃる)からのクレームが増えていきました。
「なんではやてじゃないのー?」
「8両しかないよー?」
「帯が赤いよー?あれじゃあさまじゃーん!」
1999年に購入して以来、相当走り込んでくたびれたトミー製E2系でしたが、次第に子供達から見放されていくその姿にはことさら哀愁が漂っていました。
どうにかしてこいつにもう一花咲かせられないものか。そこで妙案を思いつきました。
その案とは、ちょうど再生産となった「はやて」を購入し、それを「こまち」とペアで組ませ、捻出したこの8両に「特別塗装」を施す、というものでした。
実車を利府で見てから、かねがねFastechを作りたいと思っていたのですが、スクラッチする時間もウデもありません。そこにタネ車が転がり込んできたので、どこまでやれるか検討を重ねました。
とりあえず考える前に塗装を全剥離したのですが、10年経過した塗装はある意味非常に頑丈で、IPAに漬け込むこと半年、それでもベースのホワイトはなかなか落ちません。しかして、IPA除去後うすめ液拭き取りに変えたところ当初は良好でしたが、何とウェルドライン(プラ模型の成型時にできる、別々の経路から流れてきた樹脂の合わさる部分)に沿ってヒビが入ったり、端面がパイ生地のように割れ始まったりして、その修復が大変でした。
結局、経年も考えるとボディに加工するのはやめた方が良いと判断し、単に「Fastechっぽく塗り替える」だけにとどめることにしました。
Fastech最大の特徴は、何と言ってもその「塗装」でしょう。
日本ペイントの「マジョーラ」を使用したと思われる上半分は、見る角度や光線状態によって色が様々に変化し、緑のような青のような、捉えどころのない風合いを醸し出しています。素性が分からないまま廃車されてしまった実車を体現するもので、一言で言えば「謎」です。
さて、模型をどう染めるか。
メタリック系の色は粒状感があり、Nゲージの面積では実に粗く見えてしまいます。また、マジョーラは屈折率が異なる塗装の層がいくつにも分離することで偏光を実現しているため、仮に原色を入手したとしても相当な厚塗りになるのではないかと思われました。もっとも、プラが溶けるような塗料では塗れません。
まずカラーサンプルを作ってみました。
市販の塗料(主にクレオスやタミヤ)で近似した色を幾つか選定し、板に塗っていきます。
やはり粒子が粗い…。
下にピンクの帯を塗ったのは、途中までE5系色にしようか迷ったためですが、E5系のピンクはE2と同じ、微妙に蛍光がかった濃い色(一番近いのは京葉線の帯だろうか)でした。
メタリックの粒子は如何ともしがたいのですが、別の方法でこれを回避することを思い立ちました。
すなわち、普通の銀色(これは見た目が滑らか)を塗ってから、クリア塗装を重ねて本来の車体色とする方法です。
思い立ったはいいが、非常に手間の掛かる作業。
しかも、クレオスのラインナップには「クリアイエロー」と「クリアブルー」はあるものの「クリアグリーン」がないのです。
(缶スプレーの話。私はずぼらなので、調色を伴う車両は作らない、エアブラシは使わないと決めています)
つまり緑色を実現するのは相当な困難を伴いますが、「黄色と青を別々に塗る」ということは、塗装の層が分離するため「マジョーラ」に近い外観を出せるのではないか、というもくろみもありました。
ここで、最初に車体処理が終わったG車にテスト塗装を実施。
ちょうど買ったばかりのトレーラーコレクションを使い、陸送っぽく遊んでみました。
この段階で会メンバーに見せて回ったところ、「もう一段濃いかも」という注文が。
これ以上の重ね塗りはドアなどのモールドが潰れることを恐れましたが、銀色にクリアなので線は消えないようです。
その代わり、塗膜はおそろしくデリケートになりました。
定石では、銀の上に重ね塗りするのは食いつきが悪いためタブーです。あえて塗る場合は、金属車体と同様の処理をする必要がありますが、銀色の反射具合が変わってしまうことを恐れて普通に塗ってしまいました。
(その後、マスキング剥がれや落下事故で血の気が引くことに…)
G車の後は、動力車と先頭車を塗装しました。
先頭車の鼻先の処理は、E5のように(帯を消滅)しようかとも思いましたが、Fastechよりは少し細く、ちょうど塗り替え前のE2系の帯くらいの太さになるようにしました。
この鼻先ですが、自分でも驚いているのですが、マスキングテープはたった1枚で済みました。ゾル等の補助もなく、曲面に導かれるように10mm幅のテープを取り回しました。空気抵抗の少ない曲面とはこういう物なのか?と妙に感心してしまいました(果たして同じ理屈なのかどうか…)。
一番難しいと思われていた先頭の曲面が終わったので、何となく安心して並びを撮影。
ここでもう一つ。
Fastechといえばあの秀逸なデザインのロゴもまた必須アイテムです。
あれが有るのと無いのとでは、模型としての見栄えも断然違ってきます。
どうやってそのロゴを作るかが課題でした。
色々考えた挙げ句、以前特注インレタを作っていただいたことがある「くろま屋」さんにお願いしてみました。
3色刷りなのでかなり高価になってしまいますが仕方ありません。
原図を作るために資料をかき集めましたが、実車も既に廃車になっており、ロゴの寸法を割り出すのには相当苦労しました。結局、車体寸法や窓配置間隔(これ、調べているときにE954形の窓間隔が1両ずつみんな違うことに気付いてさらに驚愕)から「大体これくらい」で割り出すしかありませんでした。
当初、スケール通り(大体のサイズで作ったのだからスケールに拘るのは可笑しいのですが…)に1/160で版を起こして貰いました。しかし出来上がった版(実に精巧で繊細なものです。くろま屋さん恐るべし)を見て、E2系にはインパクトが足りなく思えました。E954の車体が小さいため、相対的にE2の車体では釣り合いが取れなくなります。
そこで、ロゴのスケールを1/150にした版も加えてもらい、インレタにしていただきました。
できたてほやほやのインレタはあちこちにくっつきやすく、元々線がほっそいので転写は大変でした。
帯のロゴよりこちらのロゴの方が大変です。
円形の線と、文字の背後に散らばっているピンクの点々まで実に良く再現されています。が、転写するとあちこち欠けてボロボロに…(泣
次回注文するときは座布団(透明のベースインレタ)付きでお願いします、と申し上げました。
この作業で7号車のロゴ位置を間違ってしまい、修正するためにセロテープを使ったら塗膜ごと剥がれました。
実に涙目です。
なんやかんやで完成。
塗装とロゴ以外の点について簡単に述べますと、
・窓の縁は接着支持っぽく見せるため黒に塗装
・パンタカバーは加工せず、全体をダークグレー、側面のみ白で塗装
・パンタを固定式からE4系グレードアップパーツに交換
・連結順序をFastechっぽく変更
・幌は黒一色
という感じです。
こうして、いぶし銀のE2系に新たな活躍の道が開かれたのでした。
塗装の効果は絶大で、例の子供達もしばらくの間は見た目にだまされてくれそうです。
2009年の運転会で、同じく私が製作したEast-iと連結して走るという謎めいた動画が知人の手でアップされていますので、どうぞご笑覧下さい。
この記事へのコメント
家族ウケがいい!!!!
ありがとうございます!!!!